グラフで見る正規社員と非正規社員の賃金格差

就職

雇用形態別賃金について

非正規社員は正社員より賃金が低い

グラフを見てわかるように、どの産業でも非正規社員は賃金が低く抑えられています。同一労働であっても非正規社員より賃金が低いことがあり、不合理な賃金格差が問題になっています。

男女別・雇用形態別賃金格差

非正規社員の男女間賃金格差

厚生労働省 令和元年賃金構造基本統計調査をもとにグラフを作成

このグラフを見ると同じ非正規社員でも性別によって賃金格差があることがわかります。非正規社員はパート勤務など短時間労働者が含まれるため、賃金格差が合理的かどうかをこのグラフだけで判断することはできません。

正社員の男女間賃金格差

正社員男性の平均年収は365万円、正社員女性の平均年収は271万円です。同じ正社員でも男女間で94万円の賃金格差があります。

正社員の男女別賃金をグラフで比較してみると、金融・保険業で男女別の賃金格差が大きいです。

金融・保険業の正社員男性の年収が473万円に対し、正社員女性の年収は289万円です。性別による賃金格差が183万円もあります。

同じ学歴による賃金格差は能力給による賃金格差なのか、それとも職種の違いによる賃金格差なのか、このグラフだけでは判断できません。しかし、性別により昇格や昇給が制限されている可能性があることが推測できます。1986年に男女雇用機会均等法が施行され30年以上経ちますが、男女間の賃金格差は解消されていないようです。

非正規社員は賃金が低く労働環境が不安定

非正規社員は不景気になると雇用の調整弁として扱われてきました。会社の経営状態が悪化すると契約更新してもらえない可能性が高まります。社員登用制度のある会社に非正規雇用で採用されたとしても、正社員になれるとは限りません。非正規社員のまま働き続けることも珍しくありません。

非正規社員は昇給がほとんどなく、低賃金で働き続けることになります。非正規社員は有期雇用契約で働くことが多く、労働条件が不安定です。まじめをに働いていても期間満了で契約更新されないことがよくあります。

年齢制限で採用しないことは法律で禁止されていますが、現実的には年齢が高くなるに従い再就職先を見つけることが難しくなってきます。転職して正社員になるには、非正規社員で働いたキャリアを認めてくれる企業を探さなけばなりません。就職活動をしても正社員になれなかった場合、有期雇用契約の非正規社員として数年ごとに職を転々とすることになります。

有期雇用契約から無期雇用契約への転換

不合理な労働環境を改善するために労働契約法が改正されました。有期労働契約を繰り返している非正規社員を無期雇用契約へ転換する法律です。

有期労働契約が通算で5年を超えて更新された場合、労働者の申込みによって無期労働契約に転換されます。

雇止め法理の法定化

有期雇用契約が繰り返されている非正規社員の雇止めは、正社員を解雇する場合と同様の要件を備えなければならなくなりました。合理的で社会的に相当と認められる理由がないと雇止めが無効になります。

同一労働同一賃金の法律

同一企業内における正規社員と非正規社員の待遇差を是正するため、同一労働同一賃金の法律が施行されました。労働者派遣法(2020年4月1日)、パートタイム・有期雇用労働法(大企業2020年4月1日、中小企業2021年4月1日)

賃金だけでなく、福利厚生などでも正社員との不合理な格差は認められません。法律の施行により雇用形態・学歴・年齢・性別で差別されることなく同一労働同一賃金が支払われることを期待します。

しかし、正社員と非正規社員の賃金格差が合理的かどうか、その仕事に携わっている労働者でないと賃金格差が合理的かどうか判断がつかない場合があります。

同一労働でも能力の違いや責任の重さの違いにより賃金格差が生じていると会社側から説明された場合、非正規社員はどのようにして労働条件の改善を求めればいいのでしょうか。不合理な賃金格差であることを証明するために証拠を集めて、裁判で争うしかないのでしょうか。

学歴・年齢階級別賃金格差

高卒よりも大卒のほうが生涯賃金が高い

厚生労働省 令和元年賃金構造基本統計調査をもとにグラフを作成

学歴・年齢別の賃金格差のグラフを見ると、学歴が高いほど高収入を得られることがわかります。大卒は年齢とともに賃金が上昇しています。大卒は高卒よりも賃金の上昇率が高いため、年齢が高くなるに従い、高卒と大卒の賃金格差が広がります。高卒は年齢が高くなってもほとんど年収に変化がありません。

グラフを見ると、性別が同じでも学歴によって賃金格差があることがわかります。高卒より大卒のほうが平均年収が高いことがわかります。

大卒男性の賃金はどの年代でも最も高く、賃金の上昇率も一番高いです。学歴別・性別の賃金格差が50代でピークになりなります。高卒女性は年代でも賃金が最も低く、賃金の上昇率が一番低いです。

同じ大卒の学歴でも性別により賃金格差があります。大卒男性は50代で約530万円の賃金がもらえるのに対し、大卒女性は約390万円です。

厚生労働省 令和元年賃金構造基本統計調査をもとにグラフを作成
厚生労働省 令和元年賃金構造基本統計調査をもとにグラフを作成

高収入を得るにはどうすればいいか

大学を卒業すると高収入が得られるの?

厚生労働省の賃金構造基本統計調査を見ると、大学を卒業したほうが高収入を得られるという結果が出ています。統計を見る限り学歴による収入格差は歴然です。

大学を卒業すれば正社員になれるとは限らない

文部科学省 令和元年度 学校基本調査をもとにグラフを作成

大学を卒業すると正社員で働けるイメージがありますが、そうとも言い切れないようです。このグラフを見ると大学を卒業したからといって、必ずしも正社員に採用されていないことがわかります。

大学卒業者の進路状況は、就職も進学もしていない者が38,232人(6.7%)、一時的な仕事に就いた者8,165人(1.4%)、正規社員等でない者が15,897人(2.8%)となっています。

大学院を卒業しても正社員になれるとは限らない

文部科学省 令和元年度 学校基本調査をもとにグラフを作成
文部科学省 令和元年度 学校基本調査をもとにグラフを作成

大学院に進学しても、必ずしも正社員になれるとは限りません。博士課程卒業者は、修士課程卒業者よりも正規社員の確率が低くなります。

このグラフを見ると、正社員を目指すなら大学を卒業後すぐに就職するか、もしくは大学院の修士課程を卒業後に就職すると正社員になれる確率が高いことがわかります。

正社員を目指すなら高卒で就職したほうがいい

厚生労働省 平成31年学校基本調査からグラフを作成

平成31年度の高校卒業者のうち、就職者と一時的な仕事に就いた者の割合をグラフにしました。ほとんどの生徒が卒業後に正社員として企業で活躍していることがわかります。

厚生労働省 平成31年学校基本調査からグラフを作成

高校卒業者の学科別に就職者の割合をグラフにしました。学科によって、正社員になれる割合が違うことがわかります。工業高校に進学すると正社員になれる確率が高いです。

まとめ

正規社員と非正規社員の賃金格差について
  • 雇用形態により賃金格差があり、非正規社員の賃金は正規社員賃金よりも低い。
  • 産業別にも賃金格差がある。
  • 同一企業内における正規社員と非正規社員の待遇差を是正するため、労働者派遣法、パートタイム・有期雇用労働法が施行された。
  • 性別による賃金格差があり、同じ学歴でも女性は男性よりも賃金が低い。
  • 学歴が高くても必ずしも正社員になれるわけではない。
  • 男女雇用機会均等法が施行されたが、男女間の賃金格差は解消されていない。
  • 高卒より大卒の方が平均年収が高く、賃金が高い傾向にある。
  • 同一労働の賃金格差を改善し、賃金格差を解消することが課題である。